私がダイエットを指導するときは、「一番優先する栄養素はタンパク質です」と繰り返しクライアントさんに伝えています。
なぜ大切かは「ダイエットで何を食べるべきかわかる!三大栄養素の役割をやさしく解説 」にも書いたのでチェックして欲しいですが、こういう話をするとたまに「プロテインを飲んだら太りますか?」と聞かれることがあります。
カロリー的に考えると、体のエネルギー収支がマイナスであればやせ、プラスであれば太るのであって、プロテインだから太るとかやせる、ということはありません。
ただ、プロテインなどタンパク質が豊富な食事はダイエット中にメリットが多く、ダイエットを楽にしてくれます。そういう意味で痩せやすくしてくれる栄養素と言えるかもしれません。
ですので、エネルギー収支がマイナスになる範囲内であればプロテインは気にせず飲んでOKです。
この記事ではもう少し掘り下げて、プロテインをはじめとるすタンパク質がなぜダイエットにメリットがあるのか説明していきたいと思います。
そもそもタンパク質の英語がプロテインなのですが、日本ではプロテイン=サプリメントというイメージが強いです。そこでこの記事ではプロテインというとサプリメントのタンパク質を指すことにしています。
タンパク質は食欲を抑える
ある研究によると同じカロリーの場合、栄養素によって食欲の満足度に差があることが示されており、同じ重量なら食欲を抑えるのにもっとも効果的な栄養素はタンパク質だという結果がでています。
この事実は、タンパク質を沢山食べることで食欲を抑えられるのでトータルの食事量も減る可能性を示しています。
2011年に発表された食事と肥満に関する報告では、アメリカではこの30〜40年で食事量が徐々に増えそれに伴って肥満が増大していることが示されています。興味深いことに、その食事量の増加は炭水化物の増加によって増えています。
また、このデータからは食べるタンパク質の量が多ければ多いほど食べる総量が少ないということも示されています。
その理由は「タンパク質をたくさん食べて満腹感が高いから」と言いたいところですが、タンパク質の多い食事は一般的に脂質も多いことが多くそのために食事量が減っている可能性もあります。
理由はともあれ、タンパク質を多く食べた方が結果として食事総量が減るというのはダイエットに役立ちそうな話ですね。
インスリンが肥満の元凶だという考えが最近流行っていますが、タンパク質を摂ってもインスリンが分泌されるます。
そこだけ切り取るとタンパク質は太りやすいと考えたくなりますが、実際には体はそんなに単純ではありません。
タンパク質を摂るとグルカゴンというホルモンも分泌されます。このグルカゴンにはなんと脂肪分解を促進する作用があり、体細胞への糖の取り込みも促しません(インスリンは体細胞の糖の取り込みを促します)これは体細胞が脂肪をため込むかどうかに影響します。
つまり、タンパク質を摂るとインスリンは分泌されるのですが、同時に分泌されるグルカゴンがインスリンの働きをある程度抑えてくれることになります。
ですので、インスリンの分泌という観点からは心配しなくても大丈夫です。
アミノ酸スコアと過食
タンパク質はアミノ酸という分子が多数結合してできています。
そのアミノ酸には体内で合成できる非必須アミノ酸と、体内で合成できず食べ物から摂るしかない必須アミノ酸(9種類)に分けられます。
必須アミノ酸を摂るために私たちはタンパク質を含む食べ物を必ず食べる必要があります。
そこで重要になる考え方に「アミノ酸の桶」というものがあります。
必須アミノ酸は全種類をバランスよく摂取しないと有効利用されない。これについては「アミノ酸の桶」という例をあげて説明されることが多い。つまり9種類のうち、一番含有量の少ないアミノ酸を一番背の低い桶板に例えて、いくら満杯にしようとしてもそこから水が流れてしまう=アミノ酸の含有バランスが悪い、という事になる。必須アミノ酸をバランスよく含む食物ほどスコアが高いと表現される。食品単体ではなく、食事という視点からでは1日のうちの食品中のアミノ酸を合計したものでバランスがとれればよい。
必須アミノ酸 – Wikipedia
要は、タンパク質の合成は一番少ないアミノ酸の量に合わせられるため、他のアミノ酸がどれだけあっても使えないということです。このアミノ酸のバランスを数値化したものがアミノ酸スコアと呼ばれ、ベストな状態は100です。
肉や卵は100になりますが、白米は65、小麦は38と低い数値になっています。これは必須アミノ酸の一つであるリジンが足らないからです。
もし、肉を食べず白米だけを食べるとすると、どうやって不足したリジンを補えばよいでしょうか?
答えは過食、つまりたくさん食べることです。リジンが体の必要量になるまで食べる必要があり、自然と食べ過ぎてしまうと言うわけです。
実際に草食動物の一部では必須アミノ酸の不足によって過食し、過食による肥満を解消するために走り回っていると考えられています。
草食動物の例を人にそのまま当てはめるのは議論の余地がありますが、白米やパンなどをメインに食べてタンパク質不足+運動不足の私たちが太るのもおかしくないように思います。
このことから、タンパク質をたくさん摂ることは過食を抑えられる可能性があるのです。
穀物を主食とするラットは一晩に6km以上走り続ける行動をとることが観察されています。
これは先ほど書いたようにリジン不足を補うために過食した分、激しく運動して余分なカロリーを消費する本能的な行動だと考えられています。
実際に夜に走れないようにすると重度の肥満になることも確認されています。
消化するのにたくさんエネルギーを使う
食事誘発性熱産生(DIT)という言葉あります。これは食べ物を消化・吸収されるときに消費されるエネルギーです。
「え?」と思うかもしれませんが、内臓も生きていますから、消化や吸収するのにエネルギーを使います。タダでは内臓も動かないわけです。一般的には1日の代謝の10%程度はDITだと言われています。
このDITは栄養素の種類によって違うことが分かっており、次のようになっています
- 糖質:6%
- 脂質:4%
- タンパク質:30%
この数字は食べたカロリーに対して、何%が消化に使われるエネルギーとして相殺されるかを示しています。
ご覧の通り、タンパク質が断トツです。大雑把に言うと、タンパク質を100kcal食べてもエネルギー的には70kcal食べたことと同じだということになります。
実際にはこんなに単純ではないですが、プロテインやタンパク質は糖質や脂質と比べて多少食べ過ぎても安心といえます。
このように、プロテインをはじめとするタンパク質が豊富な食べ物は、ダイエットに対して多くのメリットがあることがわかります。
「ダイエットするならタンパク質!」という気持ちになってきました?
お粥やうどん、春雨などがよいダイエット食と考えてはいけませんよ。
プロテイン(タンパク質)は太る、太らないで迷うようなものではなく、ダイエットの時は必須のものだと考えてください
- 太るかどうかは体のエネルギー収支で決まるので、プロテインを飲めば太るということはない
- プロテインやタンパク質不足は過食につながる
- プロテインやタンパク質は消費エネルギー増やしてくれる
プロテインやタンパク質が多い食品を食べることは楽やせにとても有効です。恐れずに積極的に摂るようにしましょう。ただし、肉類は脂質が多くなりすぎることがあるので注意。
また、プロテインはあくまで補助と考え、食品からタンパク質を摂る事が基本だといことは忘れずに。
コメント
この記事へのコメントはありません。