年末に、ある整体の患者さんと話をしているとダイエットの話になり「体重を落とすならまずは食事を見直すことが大切だよ」という話をしていたら、その方は「やっぱり食事ですよね。私は運動は体に悪いと聞いたのでしないことにしています」という返事が・・・
確かに運動のやり過ぎは不健康ですが、運動はダイエットにも健康にも必須の要素で、運動が体に悪いと考えるのは明らかな間違いです。この記事ではその誤解を解きたいと思います。
運動が体に悪い原因は活性酸素?
なぜこの方がこのような考え方に至ったのか詳しく聞いてみると、どうもテレビ番組か何かで「運動すると活性酸素がたくさん作られる」という話を聞いて運動しない方が良いと考えたそうです。
これは物事を一つの面だけで見て判断するという、よくある間違いの一つです。活性酸素に対する正しい理解が不足していることが一番大きな原因のような気がするので、活性酸素について少し詳しく説明したいと思います。
活性酸素とは?
酸素はヒトや動物が生きていくためには必須のものです。しかし、何かの拍子に不安定な状態になり非常に反応性の高い物質になってしまうことがあります。これが活性酸素と呼ばれるものです。
活性酸素は自分が安定した状態になりたいので、体の細胞を構成するいろいろな分子から電子を無理やり奪い取ります。電子を奪われた細胞は傷付くことになり、現在までの研究でこの活性酸素はさまざまな病気、特に心臓病やガンの発生に深く関係していることが分かっています。
このような活性酸素の有害な働きを「酸化ストレス」と呼びます。
酸化ストレスは老化を起こす作用があることも分かっています。老化というのは体内の細胞が活性酸素とたくさん反応した結果起こるものなのです。老化は一般的には歳をとればみんな平等に進むと考えられていますが、酸化ストレスが大きいほど老化が早く進むと考えられています。
活性酸素は単純な悪玉ではない!
活性酸素は体にさまざまな悪影響を及ぼしますが、完全な悪者かというとそうではありません。私たちの免疫細胞は活性酸素を武器にして体内に入ってきた細菌と戦います。
またガンの治療でよく聞く放射線治療では「放射線を当てられた細胞が活性酸素を発生させる」という現象を利用してがん細胞を破壊します。
このように活性酸素は包丁や自動車のように上手く使えば役に立つし、悪く使えば凶器になるものです。単純に悪者と決めつけないようにしましょう。
とはいえ、酸化ストレスに無防備では困ります。そこで身体には酸化ストレスに対抗するシステムをもっており、それを「抗酸化能力」と呼びます。これを高めることが老化や病気を防ぐキーポイントの1つになります。
この記事ではこれ以上言及しませんが、抗酸化能力を高めるにはビタミンCやビタミンEなどの抗酸化作用のあるサプリメントをしっかり摂ることが大切になってきます。
活性酸素と運動の関係
さて、活性酸素が発生する原因はいくつかあるのですが、運動もその一つです。運動することによる筋肉へのダメージや酸素摂取量が増加することが活性酸素の発生につながります。その量は運動中はなんと10倍に達する場合もあると言われています。
この話だけ聞くと、冒頭に紹介した患者さんのように「運動は老化や病気にきっかけになるものだ」と勘違いするのも無理はないですね。
運動で確かに活性酸素は発生するのですが、実は酸化ストレスと運動強度には深い関係があります。
限界まで追い込むようなつらい運動(無酸素運動)では確かに酸化ストレスが大きくなります。ある実験ではそのような運動をした後は休息状態でも活性酸素の量が1.2倍になっていたという報告もあります。
有酸素運動は抗酸化能力を高める。
ところが、逆にジョギングなどの有酸素運動の場合、発生する活性酸素の量はわずかなので身体がもつ自然な防衛能力で酸化ストレスを十分抑えることができます。このとき、活性酸素の発生と分解の過程でミトコンドリアの数が増加し脂肪がさらに燃えやすい身体に変わるというメリットまであります。
さらに、有酸素運動をすることで活性酸素を無害化するSOD(スーパーオキサイドジスムターゼ)と呼ばれる酵素を活性化させることもわかっています。つまり、有酸素運動は身体の抗酸化能力をアップさせる作用があるのです。
ですから、運動は活性酸素が発生して身体に悪いというのは、強度の高いきつい運動の場合で、キツくない有酸素運動を行うのであれば抗酸化能力が高まるので活性酸素のことを気にする必要はありません。むしろ活性酸素対策にやったほうがよいぐらいです。
また、キツイ運動といっても短時間なら体の抗酸化能力で十分対応できます。アスリートのようにキツイ運動を長時間行うのでなければまず心配する必要はありません。
そもそも、運動不足の人の場合、たまにやる運動で発止する活性酸素の害よりも、運動しない事による血液循環の悪化や心肺機能・筋力の低下によるデメリットの方が遙かに大きくなります。
ダイエット中も、筋肉の現象を抑えるために筋トレは必須です。酸化ストレスが怖くてやらない、なんて言っている場合ではありません。
どうしても気になる方は、ビタミンA、C、Kやグルタチオンなどの抗酸化作用のあるサプリメントを飲みましょう。これらのサプリメントは抗酸化作用以外にも体に有用な作用があります
結論としては、適度な運動は身体に良い!ですので安心して運動を行いましょう。
- 運動すると活性酸素は発生するが、運動しないことのデメリットの方が大きい
- 有酸素運動は抗酸化能力を高めてくれる
- 活性酸素が気になる場合はビタミンA、C、Kなどのサプリメントを摂るとよい
何ごとも程度の問題です。運動は体にとってはストレスですから、やり過ぎれば活性酸素の害以外にも関節や筋肉を痛めるといったでデメリットが大きくなります。効果が出る最低限のラインを狙って運動するのが楽やせのために意識したいポイントです。
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