ダイエットで脂肪というと、摂取する脂肪の種類やカロリーの話になりがちで、脂肪の貯蔵庫である脂肪細胞のことはあまり話題にでてきません。
しかし、ダイエットの目的は脂肪細胞が貯め込んだ脂肪を使うことです。
どうやって脂肪細胞が脂肪を貯蔵しているのかや、脂肪細胞の役割をきちんと理解することは、根拠のないトンデモダイエットに手を出さないために必須の知識だと思います。
まずは敵を知らないと戦えないですよね?
ということで、脂肪細胞についての記事をボチボチを書いていきたいと思います。今回は脂肪細胞の分類からです。
性質による脂肪細胞の分類
まずは種類から。脂肪細胞は細胞の種類として白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類に分けることができます。それぞれを詳しく見てみましょう。
白色脂肪細胞
皮下脂肪や内臓脂肪など、いわゆる太ったときにつく脂肪はこちらになります。ほぼ全身に分布しており、名前の通り色は白色で、脂肪を溜め込むと球形になります。牛肉や豚肉の白身の部分をイメージするとわかりやすいと思います。
白色脂肪細胞は血液中の脂質や糖質を中性脂肪に変換して貯め込む働きがあります。一方で体がエネルギー不足になると、細胞内の中性脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解して血液中に供給します。
つまり、白色脂肪細胞は体のエネルギーの過不足を調整する役割をになう細胞で、地球上のほとんどの生物に見られるます。飢餓などの厳しい条件を生き抜くためには必須の細胞といえるでしょう。
さて、ここまでの説明では白色脂肪細胞は単なる脂肪の貯蔵庫というイメージを持ってしまいますね。実際、ほとんどの人がそう考えていると思います。
実は近年の研究で脂肪細胞はさまざまな物質を分泌していることが明らかになってきています。そういった分泌物はアディポサイトカインとよばれ全身のエネルギー代謝に大きな影響を及ぼしています。ただの貯蔵庫ではないのです。
脂肪細胞自体は無駄なものでも不要なものでもありません。そこに中性脂肪をため込みすぎな事が問題なだけです。
脂肪細胞は蓄えた中性脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解して血液中に放出しますが、この処理は生理的刺激(運動や低血糖など)をきっかけに細胞内で化学反応がおこることによってなされます。物理的な力で脂肪が血液中に放出されるわけではないのです。
つまり、脂肪細胞をグリグリ揉んでも脂肪は分解されないし血液中に絞り出されるわけでもないということです。
HIFUと呼ばれる超音波を移転集中させて物理的に脂肪細胞を破壊する技術があり、そういうものを使った施術なら本当に脂肪細胞は破壊されますが、それ以外で破壊できるのかは疑問です。
褐色脂肪細胞
白色脂肪細胞が余分なエネルギーを蓄える細胞であるのに対し、こちらは積極的にエネルギーを消費する細胞です。色は鉄分を含むため褐色で形も球形ではありません。
「脂肪細胞なのにエネルギーを消費!?」とビックリするかもしれませんね。ダイエットをする人にはとても魅力的な話です。
実は赤ちゃんは褐色脂肪細胞を沢山もっているのですが、成長するにつれ減少していくことがわかっており、少し前まで「褐色脂肪細胞は成人になると消失するか、あったとしても僅かなので意味がないだろう」と考えられてきました。
しかし、最近の研究では成人してからもある程度機能しているという説が有力になっています。
とはいえ、褐色脂肪細胞をどうこうして痩せようというのは難しい話であることに変わりありません。たまに褐色脂肪細胞を冷やして刺激して代謝を上げよう…という類の話をする人もいますが、例え効果があったとしても大きな効果は望めないと考えられます。
最近の研究で、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の中間的な性質を持つベージュ脂肪細胞というものの研究が進んでいます。
マウスに長期寒冷刺激や薬物による刺激を与えると、白色脂肪細胞内に褐色脂肪細胞に近い性質を持つ細胞が現れます。
このことを踏まえて「同じことがヒトでもおこり、成人の褐色脂肪細胞と言われていたものは実はベージュ脂肪細胞なのではないか?」という説が最近有力視されているそうです。
動物実験ではベージュ脂肪細胞を遺伝操作で増やすと代謝が上がり太りにくくなることが確認されていたり、トレーニングするとこでベージュ脂肪細胞が増えるという事例が多く報告されています。
トレーニングをやって太りにくくなるならトレーニングへのモチベーションも上がると思いますがどうなのでしょうね?今後の研究に期待ですね。
場所による脂肪細胞の分類
ダイエットや健康という視点では脂肪の貯まる場所も重視されます。ここではそちらを見てみましょう。
皮下脂肪
これは字のごとく皮膚の下にある脂肪の層のことです。全身に分布しており、断熱作用による体温の維持という重要な役割をもっています。一般的には女性や子供に多いです。ここの脂肪細胞はもちろん白色脂肪細胞です。
位置関係としては皮膚と筋肉の間にあるので、皮下脂肪が多いと筋肉が見えにくくなります。つまりポチャッとしたメリハリが無いラインになるわけですね。
また、皮下脂肪がたくさんつく場所は何カ所かあり、どの部分に多く蓄積されるかは個人差や民族差があるようです。いずれにせよ、女性の場合は筋肉と並んで体のラインを決める大切な要素でもあり、多すぎても少なすぎてもよくありません。
また、皮下脂肪は次に述べる内臓脂肪より落ちにくい脂肪ですが、健康面への影響は内臓脂肪よりも少ないです。
内臓脂肪
おなかを輪切りにすると次の様な順番で組織が重なり内臓に至ります。
皮膚
↓
皮下脂肪
↓
筋肉
↓
腹膜
↓
内臓
筋肉と内臓の間、腹膜周辺にたまる脂肪のことを内臓脂肪と呼び、男性と閉経後の女性につきやすいと言われています。外見的にはお腹の上の方につきやすく、やせ気味の人でもお腹だけポッコリという場合もよくあります。こちらも白色脂肪細胞です。
脂肪の種類のところで、白色脂肪細胞はホルモンやアディポサイトカインなどさまざまな物質を分泌していると書きましたが、その分泌量は皮下脂肪よりも内臓脂肪の方が圧倒的に多いことが分かっています。
さらに、内臓脂肪が増えすぎると生活習慣病を招く物質の分泌が多くなり、生活習慣病になりやすくなります。だから内臓脂肪を減らしましょうとよく言うわけです。
幸いなことに内臓脂肪は比較的落ちやすい脂肪で、経験的には糖質制限をするとハイペースで落ちていきます。だから男性の方が痩せやすいと感じることが多いと思います。
ダイエットというとどうしても外見を重視しますが、健康のためには内臓脂肪にも注意を払う必要があります。もっとも、ダイエットすれば先に減るの内臓脂肪なので余り気にする必要はないかもしれませんが…
- 脂肪には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞がある
- 白色脂肪細胞は単なる脂肪の貯蔵庫ではなく様々な物質を分泌していて体に大切
- 白色脂肪細胞内の脂肪は揉んでも分解されることはない。
- 褐色脂肪細胞はエネルギーを消費してくれる嬉しい脂肪だが大人にはほとんどないのであまり期待しない方が良い
- 皮下脂肪は健康への影響は少ない
- 内臓脂肪は健康への影響が大きい
- 内臓脂肪の方が減りやすい
脂肪を種類と場所で分類してみました。少し難しいかもしれませんが、ダイエットするならこれぐらいの知識をもっておくと、怪しげなダイエット法には惑わされにくくなると思います。
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