ダイエットや健康管理では体重がとても重要な指標として扱われています。
個人的にはスタイルや健康に重要なのは体重ではなく体組成の比率だと思いますが、体組成を正確に測定することはとても難しいことです。人間をバラバラに分解することはできませんからね。
体組成を測定する方法として現在もっとも精度がよいとされているのはDEXA(二重エネルギーX線吸収法)という方法です。しかし、これは高額ですし被爆もします。毎日の健康チェックのために気軽に受けられるものではありません。
また、市販の体脂肪計は体の水分量や体格によるバラツキがとても大きいので大まかな目安にしかなりません。
そういう意味では、手軽にチェックできる体重を一つの目安とする考え方もありだと思います。
では、いったいどれぐらいの体重だったらよいのか?
今回から数回に分けて理想体重というものについて考えていきたいと思います。
最初の理想体重を割り出す計算式
見出しには最初と書きましたが、本当に最初かどうか実は確証が取れていません。僕が調べた限りでは最初だったので、間違ってたら多めに見てください。
で、その式ですが1871年にフランス人外科医のポール・ブローカという人が発表したものです。
女性の理想体重(kg)=45+2.3×(身長-152)/2.5
男性の理想体重(kg)=50+2.3×(身長-152)/2.5
もともとはフィートポンド系の式ですが、それだと日本人はピンとこないのでメートル系になおしています。これは欧米を中心に広く採用され20世紀前半ぐらいまで理想体重の指針として使われていました。
この式で計算すると、例えば身長が158cmの女性の理想体重は50.52kg。身長が168cmの男性の理想体重は64.72kgとなります。みなさんは如何ですか?電卓片手に計算してみましょう。
僕は身長168cmで体重が59.7kgですからかなり5kgぐらい痩せすぎですね。全然ガリガリでは無いのですが(苦笑)
意外な業界が指標を作る
20世紀半ばになるとこれに変わる新たな指標が登場するのですが、それを考案したのはメトロポリタン生命という生命保険会社です。
生命保険会社にとって、契約者の死亡率はとても重要な指標です。契約時の体型をみて精度の高い死亡率予測をしたいと考えるのは当然です。うまく行けばその時の体重によって保険料を変えることもできますからね。
メトロポリタン生命の指標は式ではなく一覧表として提供されており、身長と手首周りの長さを使って体格を小・中・大と区別し、先ほどのブローカの式と同じく、身長が同じなら男性より女性の方が軽くなるようになっています。
それにしても手首周りをチェックするというのは面白い方法ですね。
日本のメタボ基準はお腹周りのサイズですが、実はお腹のサイズは腹筋の力の入れ具合や姿勢でかなり変化します。一方の手首は筋肉がほとんど無いので力を入れてもサイズが変わりません。ですから、手首という着眼点は日本のメタボ健診より合理的なように感じます。
しかし、このメトロポリタン生命の表は体重がかなり低めに出るという問題があったそうです。その原因としてはガンと診断された人の体重も含めて算出されたからだと言われています。つまり病気になって体重が減った人まで含めているから、健康な人を対象とした場合、低めにでてしまうというわけです。
そう聞くと全く当てにならないな〜という感じがしますが、それでも従来の指標よりは客観的だということで1950〜80年代にかけて広く使われていたようです。
そしてBMIが登場
1980年代後半になると、ヨーロッパの医学界ではメトロポリタン生命の表のような一覧表でチェックするという方法よりも、ブローカの時のように数式で計算できる方が便利だという流れになり、そこでBMI(ボディ・マス・インデックス)が考案されました。この公式は現在も広く普及しているのであなたもご存じかもしれませんが、次の式で定義されます。
BMI = 体重(kg)/ 身長(m)の2乗
このBMIの特徴の一つは男女の差が無いとということです。
それ以前のほとんどの公式や表は、女性の方が男性より軽めになるように設定されていました。これは女性の方が骨が軽く筋肉量が少ないという理由で合理的なのですが、BMIでは簡略化と女性差別を避けるために差を無くしたそうです。
この時点で精度より他の都合を優先した感じがあり、信頼性に疑問符が付きますね。式の定義自体にもツッコミどころがたくさんあります。
しかし、今のところ広く普及しています。その理由の一つとして、疫学調査では死亡リスクに対してよい相関関係が示されていることが挙げられます。
次回はそのBMIと死亡リスクの相関関係についてみていきたいと思います。健康が気になる人は要チェックですよ。
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