先日、クライアントさんがやけに厚着でトレーニングに来たので、「それで運動したら熱くないですか?」と聞いたところ、
「汗をもっとかけば早くやせるかと思って」
という答えが返ってきました。他の人にも同じような話をしたことが何回かあるので、
汗をかく=脂肪が燃える=痩せる
というイメージを持つ方は多いように感じてているのですが、あなたはどうですか?
サウナやホットヨガ、岩盤浴などが流行るのも、そういうイメージを持つ人が多いことが一つの要因かなと思います。
しかし結論から書くと汗の量と脂肪の消費量は全く関係ありません。むしろ汗をたくさん出そうとする行為はダイエットの妨げになる可能性もあります。
汗をかくことがダイエットだと考えていた人は見当違いな努力をしているので今すぐに見直しましょう。
この記事では、その理由をもう少し深掘りしていきたいと思います。
なぜ人は汗をかくのか?
まず、なぜ汗をかくのかを再確認しましょう。
汗の主な役割は体温の調節です。汗として皮膚の表面にでてきた水分は、蒸発するときに気化熱として体の熱を奪っていきます。そうすることで暑くなりすぎた体がオーバーヒートしないようにしています。
つまり汗は体の熱を下げるために出ます。脂肪を燃焼したから汗をかくわけではありません。この事実をしっかりと頭に入れておきましょう。
実は、体内で糖質や脂質を分解すると副産物として二酸化炭素と水ができます。この水を代謝水と呼びます。
これだけ聞くと、「運動してできた代謝水の分だけ汗をかくんじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんね。
実際には脂質1gに対して生成される代謝水は1.07g。脂質は1gが9.3kcal、体重60kgの人が30分ジョギングすると約260kcalなので、100%脂質が使われた場合でも代謝水は約30g(30cc)程度です。
この程度の水分の増加に対してわざわざ汗をだして調整する必要は全くありません。それならコップ一杯の水を飲んだら汗がどんどん吹き出してくることになります。このことからわかるように、そもそも体内の水分量の調整は尿によって行われるのでやはり汗とは関係ありません。
ちなみに、汗をかくとデットクス効果がある…なんていう方がたまにいらっしゃいますが、汗から老廃物がでるなんていう話はニセ科学です。老廃物をだすのはおしっこの役割です。
暑い所にいると代謝は落ちる!
汗の役割を確認したところで、暑い環境が体にどのような影響を与えるのか見てみましょう。
基礎栄養学 (新ガイドライン準拠エキスパート管理栄養士養成シリーズ)坂井堅太郎著 化学同人によると、基礎代謝と環境温度について次のようなことが書書かれています。
一方、外気温が高くなると熱の生産を抑えたり、熱を放散したりする。外気温が30℃で人の代謝量は最低となる。
この記述から、30℃以上の高温のところにいると、生きていく上で最低限の代謝量になるということがわかります。(ここでいう代謝というのは主に熱の生産のことです)。
体としては、体温の上昇を代謝を下げるだけでは抑えられなくなるので、あとは汗をかいて放熱するしかありません。
つまり、サウナに入ったり岩盤浴をやって汗だくになっている人は、脂肪を燃焼させることで汗が出ているのではなく。温度調節のために体内の水分を放出しているだけです。
体内に熱がこもって危険な状態になっていますから、「代謝が上がって脂肪も燃えている」という本人の思いとは逆に、体は極限まで代謝を落として体を守ろうとしています。普通に生活しているほうがよっぽど代謝が高いでしょう。
結局のところ、じっーっとしてるだけで脂肪がどんどん消費されていくなんて都合のよい話はないということです。
サウナや岩盤浴と違ってホットヨガであればポーズによっては筋肉も使っているので多少消費カロリーが増える可能性はありますが、同じ時間なら寒いところで有酸素運動した方がはるかに多くのカロリーを使ってくれるでしょう。
体がポカポカしても脂肪は燃えているとは限らない
またサウナなどは終わったあと、しばらくの間は体がポカポカします。
そうすると「代謝が上がっている状態になっている」と思いたくなる気持ちも分かりますが、それは単に体に熱がこもって大変な状態になっているだけで代謝が上がっているわけではありません。
一方で運動後にポカポカした状態はまったくちがいます。
自ら運動して作り出した熱でポカポカしているのですから、エネルギーを消費していることは確実です。また、疲労した筋肉の回復のためにさまざな反応が体のなかで起こっており、それが最終的に1日の全体的なエネルギー消費を増やす(運動後過剰酸素消費量:EPOC)こともわかっています。
EPOCについては、回復中は他の代謝が抑えられ結局トータルの消費カロリーはあまり変わらないのでは?という意見もあり過剰に評価するのしない方がよいと考えています。とはいえ少なくともサウナでのポカポカよりはダイエットに結びつくでしょう。
つまり、運動して汗をかけば単にその瞬間にカロリーを消費するだけでなく、その後も体の脂肪燃焼を促す効果があります。一方でただ暑い所にいるだけでかく汗は温度調整以外のなにものでもありません。
汗の量でダイエットを頑張ったつもりにならないよう、くれぐれも気をつけてください。
ちなみに、ホットヨガやサウナを否定しているわけではありません。ダイエットという意味では否定的ですが健康に対してはよい効果もあります。そのあたりは混同しないでくださいね。
- 汗の量と脂肪の燃焼は全く関係がない
- 体を動かさない限り脂肪は消費されない
- 汗をダイエットの成果と勘違いしてはいけない
- 運動するなら快適な環境で気持ちよく運動するのがベスト
汗をたくさんかくと「頑張ってるぞ!」という気分になります。運動してかいた汗ならそれでOKですが、運動なしの汗でそう考えてはいけませんよ!
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