先日、嫁さんと話をしていて「太っている人ってすぐに汗をかくよね、なんで?」という話題になりました。
今回はそこのところを詳しく考えてみたいと思います。
体が大きい方が汗をかきやすい
人は体の中にたまった熱を主に皮膚から外部に放出しています(吐く息からも排熱はあります)。そのときに重要になってくるのは表面積です。
例えば、車のラジエーター(上の写真)はいくつにも折り曲げたヒダがたくさん並んだ構造になっていますよね。これは少ない容積で表面積を稼ぐ工夫です。すこしでも表面積を多くする=空気に触れる面積を多くすることで効率よく熱を空気に逃がすことができるのです。
人の場合はラジエーターのようにヒダがたくさんある構造ではないですから、単純に体の大きさに比例して皮膚の面積も増えます。
ここで、ちょっと数学なのですが、体積(≒重さと考えてOK)は長さの3乗、面積は長さの2乗で増えていきます。
大雑把な計算ですが、身長が1.5mのAさんと1.8mのBさんの場合、身長は1.2倍の差になりますが、表面積は約1.4倍、体重は約1.7倍となります。
これは「体が大きい人は体重の割に表面積は少ない」ということを示していますね。
一方で、熱の発生量は同じ体組成なら重さに比例して増えます。ですから上の例の場合、AさんとBさんの体組成がほぼ同じ場合、熱の発生量は1.7倍になるのに放熱に使える面積は1.4倍にしかならないということになります。
Bさんの方が面積的に不利になりますから、かわりに汗を沢山かく必要があるわけです。
ですから、体が大きい方が汗をかく量も増えるのが普通です。
また、熱の主な発生源は筋肉ですから同じ体重でも筋肉量が多い人の方が発生する熱が多く汗をかきやすいといえます。
脂肪は断熱材
では、身長が同じで標準体重のCさんと肥満体型のDさんの場合はどうなるのか考えてみましょう。
身長が同じでも体の各パーツの太さは間違いなくDさんの方が大きいです。先ほどのAさんとBさんの例では縦の大きさの差で話をしましたが、CさんとDさんの場合は縦ではなく横に大きいということがいえますね。
そうすると先ほどの計算と同じくDさんはCさんに比べて体重のわりには表面積がすくないという状況になります。
さらに太っている人はその体重を支える必要がありますから、もし運動量が同じなら相対的にDさんの方がCさんより筋肉量が多い可能性が高いです。悪くても同じぐらいはあるでしょう。
熱の発生源は主に筋肉ですから、Dさんの方が表面積・筋肉量の双方でCさんより熱がこもりにくくなります。
それに拍車を掛けるのは脂肪の断熱効果です。
例えば北極海を泳ぐアザラシなどは分厚い脂肪の層があるおかげであんなに寒い海を平気で泳ぐことができます。
人をはじめとする動物の体は筋肉の上に皮下脂肪がありますから筋肉から発生した熱が外に伝わりにくい構造になっています。これは寒いときには有利に働きますが熱いときには逆効果になります。
本来は生息地域の環境に合わせて脂肪量が適切に調整されればとても理にかなった構造ですが、肥満の人はそうではありません。
まとめると、肥満の人は、体表面積と脂肪の断熱効果の2つの面で痩せている人よりも熱がたまりやすい体になり、少し動くだけでも汗を沢山かいて体温調節を頑張る必要があるわけです。
ですので太っている人は相対的に汗をかきやすいという印象はほぼ正しいと言えるでしょう。ただ、筋肉量が多い人や大柄の人も汗はかきやすいのでお忘れなく。
さらに発汗は自律神経がコントロールしているものなので、自律神経失調症の場合は太っている・痩せている関係無く汗を沢山かいたりすることがあります。
何もしていないのに不自然に汗をかく場合、ストレスによって自律神経が参っている可能性もあります。そんなときはストレスが高い状態にないかどうかをチェックすることもお忘れなく。
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