ダイエットの基本は「吸収したカロリー < 消費したカロリー」ですが、たくさん食べても太らない人と、そんなに食べてないのに太りやすい人、というように太りやすさの個人差は間違いなく存在します。それを可視化するために、遺伝子検査による体質チェックも低価格でできるようになってきています。
ここではそういう遺伝子というアプローチとは別の方法ですが、手軽に体質を分類する方法をご紹介したいと思います。それが胚葉学です。
科学的かと言われると微妙なところなのですが、自分の体がどういう傾向を持つかを判断する指標としては面白いのでご紹介したいと思います。
胚葉とは?
精子と卵子が受精して僕たちは生まれるわけですが、その受精したものを胚と呼びます。命の最初のスタート地点ですね。
胚は細胞分裂をくり返して発達していきますが、2週間目が終わる頃には、3つの層に分かれてきます。一番外側の層を「外胚葉」、真ん中の層を「中胚葉」、一番内側の層を「内胚葉」と呼びます。
面白いのは、この3つの層の役割が体の各組織と対応しているということです。
- 外胚葉
皮膚表皮や感覚器官、中枢神経系や末梢神経を形成 - 中胚葉
骨、筋肉、泌尿器、生殖器、心臓、血管系、血液を形成 - 内胚葉
腸粘膜や付属器官の腺を形成
胚葉学では発育の過程でこの3つの層のどれが優位に発達するかで、体型の特徴だけでなく性格や考え方までもが、ある程度決まってしまうとしています。
胚葉型による体型の違い
胚葉学では生まれた初期の段階で自分の全てが運命づけられるようなイメージがあります。しかし、外形的特徴は仕方ないとしても、思考パターンなどに関しては後天的な要素の方が強いと考えられています。
脳科学の分野では、「性格や思考パターンは遺伝よりも後天的な影響の方がずっと大きい」というのが学会のコンセンサスでもありますし、私自身もそう考えているので、ここでは性格などについては特に言及しません。
体型に関しては次のような関係があると言われています。
- 外胚葉が優位→やせ体型
- 中胚葉が優位→筋肉質体型
- 内胚葉が優位→ぽっちゃり体型
中胚葉は筋骨格系や心肺系の発達が優位なので筋肉質、内胚葉型は内臓がよく発達しているので吸収がよさそうなのでポッチャリ気味、と考えられそうです。外胚葉型は神経系の発達が優位なので、神経質な人に痩せている人が多いと考えると「そんなものかな」という気になります。
実際、各タイプでトレーニングや普段の生活で注意すべきポイントが変わってきます。
ここで気をつけて欲しいのは、この3つの型にきっちり分かれるわけではないということです。傾向的にどれかに寄っている、というぐらいに捉えましょう。
では、これから各タイプを詳しく説明してきたいと思います。
外胚葉型
体型の特徴
外胚葉型の人は神経系と皮膚が優位に発達しているタイプになりますが、これは裏を返すと内臓や筋肉などの発達が相対的によくないとも言えます。ですので、外見的な特徴としては次のような点が挙げられます。
- 細長いライン
- 肩幅が狭い
- 骨は細く突き出ている
- 脂肪が少ない
- 虚弱で繊細な印象
そして、一般的に外胚葉型の人は甲状腺がとても活動的(つまり代謝が活発)であることが多く、「食べても食べても太らない」、「太ることができなくて悩む」というタイプになります。
太っている人からすると羨ましい限りですが、男性の場合は「筋肉がなかなか付かない」、女性の場合は「やわらかい体のラインにならない」など、これはこれで大変です。
あるものを減らすより、無いものを増やす方がエネルギーが必要なので、3タイプの中では体型を変えるための努力が一番必要です。
外胚葉型の体型管理の指針
外胚葉型の人の多くは代謝が活発なため体の組織が素早く再生・回復するという特徴があり、たくさんのトレーニングを続けてこなすことができます。とはいえ、材料が足らなければ筋肉はつきません。筋肉をつけるにはタンパク質が豊富な食べ物を中心にたくさん食べる必要があります。
しかし、他のタイプに比べて内臓が弱いことが多いので、一度にたくさん食べると内臓が受け付けることができない場合もあります。その場合は吸収の良いプロテインをたくさん摂ったり、1回の食事量は減らしてかわりに食事回数をふやすなどの工夫が必要になってきます。このあたりで苦労する方も多いです。
また、基本的に筋肉が弱いことが多く、姿勢を維持する脊柱起立筋や腹筋の弱さが原因で、猫背など姿勢が悪いこともよくあります。特に腹筋群が弱い人は内臓を支えきれず腹部の下垂を伴っていることもあります。
ちなみに、私の経験では脊柱側湾症の人は大体このタイプに当てはまることが多いです。相関関係はわかりませんが…
まとめると、外胚葉型の人は最低でも体幹周りの筋肉はしっかり鍛えることをオススメします。姿勢が改善するだけでも見た目の印象が良くなりますからね。
筋肉を増やしたり、ふっくらした体型を目指したい場合、トレーニングも食事の摂取もどちらも人一倍頑張る必要があります。
中胚葉型
体型の特徴
中胚葉型の人は筋骨格系と循環器系が優位に発達しているタイプで、いわゆるスポーツマン的な体型になります。典型的な中胚葉型の外見的な特徴は次のようになります。
- 筋肉質で頑丈な骨格と関節をもつ
- 鎖骨が大きく肩幅が広い
- 胸囲の中でも胸郭が目立つ
- 四肢末端部の筋肉の発達が著しい
筋肉量は主としてテストステロン(男性ホルモン)の影響が大きいので、中胚葉型は男性に多く見られます。テストステロンは男性の場合95%は睾丸から、残りの5%は副腎から分泌されます。
女性の場合、男性ホルモンは副腎から分泌される分だけで、男性の5〜10%程度になります。副腎の働きが活発な場合、女性でも中胚葉型になることがありえますが、男性の中胚葉型ほど筋・骨格が発達することはありません。
ちなみに男性に中胚葉型が多いのは進化の過程の自然淘汰の結果だと言われています。
狩猟時代は、狩猟ができて外敵から雌と子供を守ることができる雄、さらにいうと同類から尊敬され雌を手に入れられる雄、というものが求められます。それに適応するために強い筋肉や骨格、心肺機能を手に入れていたのだろうと考えられているわけですね。
中胚葉型の体型管理の方針
基本的に筋肉質な体なので、筋肉はつきやすいといえます。
また、筋肉量が基本的に多いので基礎代謝の面で有利なことと、体力的に優れていることが多いので適度な運動習慣があれば太りにくいと言えます。
ただし、過食に対しては外胚葉型よりもずっと太りやすいので適度な食事コントロールは必要です。昔体育会系で筋肉ゴリゴリだったけど、大人になったら太ったというのは良くあるパターンですね。
まとめると、食事・トレーニングともにホドホドにやっていれば大きく体型を崩すことはありません。体型を維持しやすいタイプと言えるでしょう。
内胚葉型
体型の特徴
内胚葉型は内臓が優位に発達しているタイプになります。内臓が発達しているということは消化・吸収能力が優れるということになり、蓄えやすい=脂肪がつきやすい体ともいえます。
とはいえ、「脂肪が付きやすい=太りやすい」というよりは、脂肪によって「柔らかなラインをもった体になる」とポジティブに捉えましょう。
- 骨格は外胚葉型ほど細くない
- 筋肉は中胚葉型ほど太くない
- 脂肪層がよく発達していて筋肉の起伏は見えない
- 四肢は太ももや上腕(二の腕など)など胴体近くがよく発達し、ふくらはぎや前腕など先端にいくにつれ細くなる
内胚葉型は女性に多く見られます。
女性に脂肪が多いのは卵巣で作られる女性ホルモンの影響が大きく、これは妊娠のためのエネルギーを蓄えるためだと考えられています。
極端なダイエットをして脂肪を落とすと生理が止まると言いますが、それは妊娠に耐えられるだけのエネルギーが体に無いことを意味しているわけですね。
また、内胚葉型は外胚葉型とは対照的に甲状腺が不活発な傾向があり代謝が緩慢になります。
つまり省エネな体のため、たくさん食べる必要が無いということです。これは食糧不足の時に生き延びる大切な能力ですが、ダイエットしたい人にとっては困った体質といえますね。
内胚葉型の体型管理の指針
内胚葉型は一般的に言われるダイエットが一番当てはまるタイプです。
基本的に代謝が低く脂肪を溜め込もうとする能力が高いので、食事はしっかりとコントロールする必要があり、全体的な代謝を少しでも向上させるため、運動も取り入れるべきです。
たくさん食べる必要がない体であることを自覚し、量より質を重視した食生活を目指すことが大切です。
つまり、太りやすく栄養価の低い糖質・炭水化物の多い食べ物をなるべく減らし、タンパク質・脂質・ビタミンやミネラルの豊富な食べ物を増やすことです。
それに加えて、体の活動量も増やし体型を整えるために
- 家事や通勤などの日常生活で活発に体を動かす
- 筋トレをして筋肉をつける
- 有酸素運動をやる
といったことも継続してやりたいです。体型を維持するためには、外胚葉型や中胚葉型の人よりも努力が必要だという認識を持ちましょう。
環境・努力で体型は変えられる
ここまでで、3つのタイプについて詳しくみてきました。
中には、「わたしは内胚葉型だから太っても仕方ないんだ…」と思った方もいるかもしれませんね。
残念ながら遺伝的な差・限界があることは確かで、それを受け入れることは大切ですが、悲観的になることは全くありません。
骨格を変えることは無理ですが、その上の筋肉や脂肪は環境や生活習慣で変えていくことができます。先ほど紹介したように胚葉型に合わせたトレーニング・食事管理をすれば、痩せたり筋肉をつけたりといったことは可能です。
また、タイプが全く違う人と比較したり、やっていることを真似るのは意味が無いということもわかると思います。
「自分のタイプを知ることで、とるべき戦略が明確になった」と前向きに捉えましょう。
- 外胚葉型
痩せている(太りにくい)
筋肉を増やしたり、脂肪を増やすにはたくさん食べる必要がある - 中胚葉型
筋肉質
油断すると太ってしまうが体型維持の労力は少ない - 内胚葉型
ポッチャリ(太りやすい)
脂肪が付きやすいので、食事の管理や運動に気をつける必要がある。
それぞれに特徴があるので、自分の当てはまるタイプに合わせた戦略を摂りましょう。
タイプが違う人のダイエット経験談はあまり参考になりません。そういうものに惑わされないようにしましょう。
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