ダイエット業界では
「基礎代謝を上げると、普段から消費されるエネルギー量が増えるので太りにくくなる」
ということが当然のことのように言われています。で、その方法の一つが筋肉を付けることだといってフィットネス業界の人達は主張しています。
しかし、前の記事でも書いたように筋肉は思ったほど基礎代謝のアップに貢献しません。さらに言うと、実は太っている人ほど基礎代謝が高いというのが現実なのです。
今回はその当たりを考えていきましょう。
基礎代謝の定義と計算式
そもそも基礎代謝の定義は
人が起きているときの最小限のエネルギー
のことです。最小限のエネルギーということは、少しでも体を動かすことはモチロン、食後や入浴後に体が熱くなってもそれは基礎代謝が上がったとは言えません。基礎代謝以外のエネルギー消費が増えただけです。
ちなみに、どうやって測定するかですが、少しでも運動したり食事したりしてもエネルギー消費が増えますし、熱い・寒いという気温の変化にも影響を受けるので、
- 12時間程度断食後
- 25度ぐらいの室内
- 安静にかつ目が覚めた状態
で測定するそうです。こんな面倒なことを毎回するわけにはいかないので、推定式というものがあります。よく使われるのは厚生労働省お墨付きの
基礎代謝 = 基礎代謝基準値 × 体重
という式で算出する方法です。基準値は年齢と性別毎に決められています。これとは別に、ハリス・ベネディクト式というものでも計算できます。
男性の基礎代謝=664.7+13.75 ×体重+5.0×身長ー6.76×年齢
女性の基礎代謝=655.1+9.56 ×体重+1.85×身長ー4.68×年齢
こちらの方がパラメータが多くて精度が高そうですが、基本的に白人のデータを基にして作られて式のため、日本人では誤差が大きいと言われています(国立健康・栄養研究所)
まぁ、どちらの式でも200kcal程度は誤差があると考えて置いた方がベターです。そういう意味でも、ダイエットでカロリー計算なんて目安にしかなりません。厳密に計算するだけ無駄です。
基礎代謝は体重に比例する、ということは・・・
さて、上記の推定式をよ〜く見ると、どちらも体重を使います。これは体重が重たいほど、つまり体が大きいほど基礎代謝が大きくなることを意味しています。どちらも体脂肪の量など考慮に入っていません。とにかくデカイ人が基礎代謝も大きいという計算結果になります。
太っている人はもちろん脂肪も多いですが、重い体を動かすためにそれなりの筋肉もあります。脂肪自身も生きた細胞ですからエネルギーを消費します。だから基本的に体が大きければ基礎代謝は大きくなるのは当たり前と言えば当たり前なんですね。
とはいえ、厳密に基礎代謝を測定した研究では、脂肪を除いた残りの部分の体重(骨格筋、内臓、骨など))が多いほど基礎代謝は高く、小さいほど低くなるという傾向があることは分かっています。そういう意味でも上の計算式は誤差は大きいと考えられますね。
なにはともあれ、体重が増えれば基礎代謝があがり、減れば低くなることは確かです。だから、基礎代謝を上げる一番簡単な方法は太れば良いのです(笑)筋肉を1kg増やすのはとても大変ですからね。そしてダイエットして痩せれば基礎代謝は下がります。
このことからもわかるように、「基礎代謝を上げてダイエット」という言葉はなんだか矛盾しているような表現ですよね。
あ、勘違いしてはダメなのは代謝ではなく基礎代謝です。代謝は基礎代謝+運動や食事によるエネルギー消費も含みますからね。だから
「代謝を上げてダイエット」は正しいですが、「基礎代謝を上げてダイエット」は矛盾していると言うことです。
それから学術的な世界では、「筋肉を付けて基礎代謝を上げることがダイエットにつながる」ことを証明した研究はありません。基礎代謝は肥満に関する重要な要素ではないと考えられています。
なので、あまり基礎代謝がどうのこうのという言葉には振り回されないようにしましょう。
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