テレビのダイエット番組や某パーソナルジムのCMで、2ヶ月程度の短期間で細マッチョになるビフォア&アフターがよく出てきます。
あれを見て「自分も…」という気持ちになる方も多いかもしれません。
しかし、残念ながら誰でもあのように短期間に細マッチョになれるわけではありません。ああなるためには条件があります。
もし、あなたがその条件を満たさなかったら…
大丈夫です。時間がかかるだけでコツコツ努力すれば誰でも変えることは可能です。
ただ、「短期間で変われる…」と思って取り組むと「全然変わらない、こんなはずじゃなかった」と心が折れてせっかくの努力を途中で投げ出すことになりかねません。
そういう方が少しでも減ってコツコツと体型改善に取り組むことが当たり前になってもらいたいと思い、この記事を書きました。
筋肉はベストな条件だと20%増やせる
東大の石井直方先生がどれぐらい筋肉量が増えるか検証した実験があります。
対象:あまり運動していない人
期間:3ヶ月
という条件でトレーニングを行った結果、年齢性別を問わず体重の約20%筋肉量を増やすことができたそうです。
この結果を体重60kg、筋肉率が40%(24kgの筋肉量)の男性に当てはめると、3ヶ月後には24kg×0.2=4.8kgぐらい筋肉が増えるということになります。
これはなかなかの数字です。この通りに行けば短期間で細マッチョも現実的な気がしますね。しかし、これは食事もトレーニングも完璧に行った場合です。特に問題になるのは食事です。
筋肉増と脂肪減は矛盾する
筋肉が増えるには材料とエネルギーが必要です。そのためにはたくさん食べなければなりません。効率よく筋肉を増やすにはオーバーカロリーになるぐらい食べて、十分なエネルギーと材料を体に供給させなければならないのです。
一方で脂肪を落とすためには体のエネルギー収支をマイナスにする必要があります。
この2つ、どう考えても矛盾していますよね。
ボディビルダーの体づくり
筋肉ムキムキと言えばボディビルダーですが、彼らはバルクアップ(増量)期間とダイエット(減量)期に分けて体づくりをしています。
増量期は脂肪が増えること覚悟でオーバーカロリーにして筋肉を増やし、ダイエット期間はアンダーカロリーにして、できるだけ筋肉を残して脂肪を落とすように努力します。
ここで失敗すると筋肉量を落としすぎたり、脂肪を落としきれなかったりして、コンテストで負けてしまうことになるので、腕の見せ所なります。
このことからも分かるように筋肉を増やしながら脂肪を減らすというのは基本的に同時にはできません。先ほどの体重の20%増加も十分な栄養摂取があってこその話です。
ただし、今までの人生で筋トレを全くしていなかった方の場合、体が刺激によく反応し、アンダーカロリーでも筋肉が増えることはありますが、それでも材料不足ですからモリモリ筋肉が増えていくとにはなりません。
筋肉は2ヶ月ではそんなに増えない
これで、食事制限中に筋肉を増やすことが矛盾する難しいことだということがわかったと思います。
実は、もう一つ短期集中で細マッチョになれない理由があります。それは筋肉が増えるスピードです。
筋力と筋肉量の関係
筋トレを始めた直後、特に初心者の場合はドンドン上げられる重さが増えていきます。
一般的には筋肉の断面積、つまり太さと筋力は比例します。太ければ太いほど力がでるわけですね。なので、
上げられる重さが増える=筋力が増える=筋肉が太くなる
となり、短期間で筋肉が太くなるように思います。
しかし、実はそうではありません。筋力には筋繊維の太さ以外にもう一つ大きな要因があります。
それが神経です。
筋肉というのは顕微鏡を使わないと見えない細い筋肉繊維が束になった構造になっています。そして、一本一本の筋肉繊維はオンとオフしかできません。つまり力の調整はできないのです。縮むときはいつも全力で縮みます。
では、どうやって力を調整しているかというと、縮む筋肉繊維の数で調整をしています。たくさんの筋肉繊維が一度に収縮すれば大きな力が出るわけですね。
それをコントロールするのが筋肉につながっている運動神経です。
普段、あまり運動しないと筋肉を全力で使うことがありません。そうすると運動神経も全ての筋繊維に「動け!」と指令を出す能力が下がってきて、一部の筋繊維しか使えなくなってきます。自分のもつ筋力を100%発揮できない状態になるわけですね。
神経→筋肉の順で発達する
筋トレをするとまずは運動神経が先に発達し、同じ筋肉量でもより多くの筋肉繊維が収縮できるようになってきます。そして結果的に上げられるウェイトの重さが増えていきます。
これがトレーニングを初めてすぐに筋力がドンドン増えていく秘密で、約1ヶ月程度はこちらの変化がメインとなります。
神経が全ての筋繊維に信号を送れるようになると、その時の筋繊維の量で上げられる上限に達します。ですので、そこからやっと筋肉が太くなるというイメージをもってください(実際には神経と筋繊維の発達がこのようにキレイに分かれるわけではありません)
そうなるには約2ヶ月かかります。ですから筋肥大が始まって太さが変わってきたなと実感できるのは2~3ヶ月後からになります。そもそも筋肉繊維を増やすということは、無いものを作り出すことになります。だからそんなにすぐに発達するものではないのです。
ですので某パーソナルジムがやっている2ヶ月という期間は筋肉の増加を感じるにはそもそも短すぎると言えます。
脂肪は現存する脂肪細胞に脂肪を溜め込むだけなので、生理学的な負荷が小さく筋肉よりはるかに早く大きくなれます。残念な話ですね…
ちなみに、昔は脂肪細胞の大きさは幼少期で決まりそれ以降は増えないと言われていましたが、現在では脂肪細胞の吸収量の限界に達してしまうと、新しい脂肪細胞が作られることが分かっています。
短期間でマッチョになれる人の特徴
これまでの説明で、すぐに筋肉は太くならないということは理解できたと思います。では冒頭で述べた2ヶ月で細マッチョになっているのはウソなのでしょうか?
実は、これはウソとは言い切れません。短期間で細マッチョに慣れる人の特徴としては3つほど考えられます。
- 太っているけど活動的な生活をしている
- 筋肉がもともとあり、その上に脂肪が乗っている
- 昔、スポーツをしていて筋肉がよく発達していた
まず1つめですが、「太っている人はその重い体重を支えるためにそれなりの筋力が必要」ということです。座ってばかりで本当に動かないヒトの場合は微妙ですが、それなりに活動的な人の場合は、ある程度の筋肉がないと動けません。その筋肉をできるだけ維持して脂肪をカットしていくと細マッチョになりやすいです。
2番目は、力もあるし体も大きいというタイプですね。ラグビーや柔道のようなぶつかり合うスポーツで鍛えられていたり、遺伝的に筋肉質で骨太な方ですね。
この場合も、ダイエットで脂肪も筋肉も落ちていったとしても、ベースの筋肉量が多いので、結果的に細マッチョに仕上がります。
3番目は、昔しっかり筋肉をつけておくと、それなりに体を使っていればそこまで筋肉量は減りません。そのため脂肪を落とした時に筋肉もそれなりに残った状態になります。
また、マッスルメモリーという考えがあり、これは昔筋肉をつけておくと、その状態を体が覚えていて、比較的早く元に近い筋肉量に戻るというものです。そうすると、例えダイエットで筋肉が落ちたとして、比較的短期間で筋肉量を回復でき、短期間で細マッチョになれる可能性が高くなります。
これらの条件を見てわかる通り、要は過去〜現在にある程度の筋肉を持っていたかどうかが重要ということです。実際、こういう方はウェイトトレーニングの重量も重いものが扱え、まったく運動していなかった人とは明らかに違います。つまり、
若い頃スポーツをやっていてい筋肉モリモリ、ところが社会人になってから運動不足と過食でプヨプヨになった・・・
とう人は短期間で細マッチョになりやすいのです。これが2ヶ月で劇的な変化をした人の秘密です。
もしあなたが上記のことに当てはまる人だったら、短期間であっと言わせる体になれるポテンシャルをもっています。もっとも運動をしなくなった期間が長かったりその間の不摂生がひどい場合はそう簡単ではないと思いますが…
筋肉が少なく太っている場合の戦略
一方で、運動経験ゼロで昔から筋肉が少なく、かつ中途半端な肥満レベル(お腹だけポコンとでている)の場合は短期間で細マッチョは諦めた方が賢明です。
そういう方の場合は焦らず、ボディビルダーのように増量期と減量期を設けて時間をかけて計画的に取り組むことが近道です。
ただ、体脂肪が多い状態(15%以上)で増量すると脂肪が増えやすいので、先に体脂肪率が15%を切るまで減量してから(できれば10%位まで落としたい)増量期に移って筋肉を増やしていくという戦略がオススメです。
コツコツやれば必ず体は変わるので、焦らず地道にやっていきましょう。
- 短期間で細マッチョは、ベースとなる筋肉量がある人でないと難しい
- 筋肉は先に神経が発達し、その後で太くなる
- アンダーカロリーで筋肉を増やすことは材料・エネルギー不足のため難しい
- 筋肉が少なく太っている人は、まずは痩せることを優先し、痩せてから筋肉を増やすという2段階戦略がオススメ
宣伝広告を見たときに、短期間であなたがそういう体になれるかどうかは、若い頃の運動経験や体格を思いだして冷静に判断しましょうね。
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