「腹が減ったら戦はできぬ」と言われるように運動する前にエネルギーを摂っておこう考える人は多いと思います。ところが運動前に何を食べるかでせっかくの運動のダイエット効果を弱めてしまう可能性があります。
人間は糖質と脂質のハイブリッドエンジン
まず、人間が動くときのエネルギー源は基本的に糖質と脂質です(タンパク質もエネルギーとして使われことはあります)。どちらを優先的に使うかは運動強度できまります。
一昔前はダイエットのための有酸素運動は「ゆっくり長く」がよいと言われていました。
- 脂肪は運動後20分ぐらい経ってからでないと使われない
- 強度が高い運動をすると糖質しか使われないからダメ
という話は運動でダイエットしようと思った人は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?それを今でも信じている人がいると思いますが、残念ながら今はこのような考え方は否定されています。
ウォーキングなど低強度の運動では脂質が8割以上、100m走や筋トレのような高強度短時間の運動ではほぼ糖質のみが使われますが、糖質と脂質を使う割合は運動強度によって徐々に変化していきます。ある運動強度を境にして急に切り替わるわけではありません。運動開始直後もダッシュなどの余程の高強度でないかぎりは脂質もエネルギーとして使われます。実験結果の一部分を切り取って拡大解釈し先ほどのような話が広まってしまったのです。
また、有酸素運動を続けていくと同じ運動強度なら脂肪が使われる割合が増えてきます。つまりより高い運動強度でも脂肪が使える体になっていくわけです。出典は忘れましたが、よく鍛えられたマラソンランナーではレースペースでも8割程度脂質をエネルギーとして使える人もいるそうです。
このように有酸素運動を続けると運動で脂肪を効率よく使う体になっていくのですが、ここで一つ落とし穴があります。それは食べ物です。
糖質エンジンのスイッチを入れる食べ物とは?
先ほど運動強度によって糖質と脂質を使う比率が変わると書きましたが、実は強制的に糖質をメインで使うエネルギー回路にしてしまう方法があります。それは糖質を食べることです。
糖質(特に砂糖などの甘いものや白米など生成された糖質)を食べてしばらくすると血糖値が急激に上昇します。そうすると血糖値を下げるためにインスリンを分泌します。
インスリンが分泌されると筋肉ではGLUT4(糖輸送担体)の発現が増加し糖質を積極的に取り込むようになると同時に解糖系(糖質を使ったエネルギー生産回路)の働きが活発になります。つまり、脂質ではなく糖質主体で動くようになるわけです。この作用に運動強度は関係ありませんから、ゆっくりの運動であっても体は糖質を積極的につかうモードになってしまうわけです。
糖質を食べてから消化吸収され血糖値が上がるのには大体20〜30分ほどかかります。運動開始前20〜30分以内に糖質を摂取した場合は、吸収される頃には運動によって糖質の消費量が増加しているのでそれほど急激に血糖値を上げません。ですのでインスリンの影響も少ないです。
しかし、運動の30分以上前に糖質を食べるとインスリンが大量に分泌され運動を始める頃には糖質主体の回路に切り替わってしまいます。そうすると低強度の運動であっても筋肉は脂質を積極的に使えなくなり、糖質ばかり消費することになってしまいます。おまけに、この状態で運動をすると糖質ばかりドンドン消費してすぐに疲労感を感じ運動を続けるのがつらくなります。
このように運動前に糖質を食べると、すぐに疲れるし脂肪は使わない、というダイエットのための運動としては非常に残念な状態になってしまいます。
運動はなるべく空腹で!
ではどうするべきかというと、空腹の状態で有酸素運動をするのが一番です。血糖値が低めな状態で運動すると体は積極的に脂質を使おうとします。運動による脂肪を燃焼させる比率を上げることができますし、脂質を積極的に使う体にもなりやすくなります。いいことづくしですね。
「空腹で運動なんかしたら倒れちゃう」
なんて思う人がいるかもしれませんが、運動を開始すると肝臓からのグリコーゲンの放出が増えたり糖新生によって血糖値が上がり逆に空腹感を感じなくなります。1時間程度の運動ならまったく問題ありません。さすがに数時間におよぶ運動の場合は補給をした方がベターだと思いますがダイエット目的の人はそこまでやりませんよね。
1日の中で一番空腹なのは朝なので有酸素運動は起きてから朝食前にやるのがベストです。
どうしても何か食べたいという人は、運動前30分以内に食べるようにしましょう。ただし、消化の悪いものは運動中に気持ち悪くなるかも知れないのでゼリー状の補給食などがオススメです。
ダイエットで有酸素運動というのは本当は効率がよくないですが、走るのが好きな人にとっては取り組みやすい方法です。せっかくの努力が無駄にならないように食べ物の食べ方は注意して取り組むようにしてくださいね。
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